日本で旅行会社を立ち上げるには ①会社設立 ②在留資格取得 ③旅行業登録 の三段階をすべてクリアする必要があります。
特に外国人起業家は、事業準備の早い段階で 経営・管理ビザ(Business Manager Visa) あるいはスタートアップビザのどちらを使うかを決めておかなければ、登録審査が進まず開業時期が大幅に遅れてしまいます。
ここでは、外国人が日本で旅行会社を設立するために必要な、経営管理ビザの要件と旅行業登録の流れについて説明していきます。
旅行業の6区分と取扱い範囲
| 区分 | 取扱い範囲 | 主な特徴 |
| 第1種旅行業 | 国内外すべての旅行商品 | 責任範囲が最も広く、募集型企画旅行(海外)を扱える唯一の業種。 |
| 第2種旅行業 | 募集型企画旅行(国内)のみ | 海外パッケージの造成不可だが、受注型企画旅行や手配旅行は可能。 |
| 第3種旅行業 | 募集型企画旅行は営業所の隣接市町村内に限定 | 地域密着型モデルに適し、保証金も第1種より低額。 |
| 地域限定旅行業 | 募集・受注・手配すべてが限定地域内 | インバウンド向けローカルツアーで人気。 |
| 旅行業者代理業 | 他社商品の代理販売のみ | 売上は手数料収入。提携1社の商品のみ取り扱い。 |
| 旅行サービス手配業 | 宿泊・交通などの手配受託 | 旅行会社からの外注を請け負うBtoBモデル。 |
日本で旅行会社を立ち上げようとする外国人にとっては、海外旅行を扱うか募集型パッケージを企画するかが最大の分岐点になるでしょう。自社ブランドで海外ツアーを売りたい場合は第1種一択となります。
経営・管理ビザの必須5要件
外国人が日本で会社を設立するには、「経営・管理ビザ」の取得が不可欠です。ビザ申請要件について確認しておきましょう。
■改正後の要件変更に注意!
| 要件 | チェックポイント |
| ① 独立した事業所 | バーチャルオフィス不可。旅行会社として使用できる賃貸契約書と室内写真を提出。 |
| ② |
雇用する場合、永住者・定住者など就労制限のない在留資格者に限る。 |
| ③ → 公認会計士・中小企業診断士などの専門家による評価を受けた事業計画書の提出 |
3年分の売上・利益予測、仕入先・顧客ターゲット、KPIを数値化。 |
| ④ 経営・管理経験3年以上 | 履歴書と在職証明書で実務実績を証明。 |
| ⑤ 日本人と同等以上の報酬 | 給与テーブルで同職種日本人との比較を明示。 |
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スタートアップビザという選択肢
スタートアップビザは、外国人起業家が日本で会社設立準備を行うための仮在留資格です。
自治体から事業計画認定を得ることができれば、最長1年(延長可)滞在できますので、事業所確保や資本金500万円の調達についてはその間に進めることが可能です。準備期間中にオフィス契約・資金調達・人材雇用を整え、条件を満たした時点で経営・管理ビザへ移行するのが一般的な流れです。
【例】東京都で「第二種旅行業登録」するための流れ
例として、東京都で第二種旅行業の登録をするときの手続きについて確認しておきましょう。外国人が立ち上げた法人で本店を都内に置くケースを想定しています。
1.必須要件を満たすための準備
手続きは多岐に渡りますが、なかでも必須とされる要件がありますので、優先して準備することが大切です。
旅行業務取扱管理者の配置
営業所ごとに総合または国内の旅行業務取扱管理者を1名以上選任します。合格証コピーと雇用契約書を後の申請書類に添付しましょう。
財産的基礎の確認
直近決算で基準資産額700万円以上を示し、登録完了後に営業保証金1,100万円を法務局へ供託するか、旅行業協会に加入し弁済業務保証金分担金220万円を納付する資金計画を立てます。
営業所(主たる事務所)の確保
バーチャルオフィスは不可ですので、都内に実在するオフィスを賃貸契約し、平面図と写真を用意します。
2. 申請書類の作成
第二種旅行業の登録申請書類を揃えましょう。
登録申請書・登録簿(第1号様式等)
東京都産業労働局サイトからダウンロードし、4片複写で作成します。営業所が複数ある場合は様式(2)を追加します。
旅行業務に係る事業計画/組織概要
3年分の売上予測・マーケティング戦略・組織図を添付します。
定款・履歴事項全部証明書
「旅行業」を目的に含め、商号の類似チェックを済ませておきましょう。
財務諸表(貸借対照表・損益計算書)
基準資産額を計算できる最新決算書一式を用意します。
役員の宣誓書・履歴書、管理者合格証写し
欠格事由がないことを宣誓し、経歴を明示しましょう。
3. 事前相談と申請予約
東京都庁(第一本庁舎19階 観光部振興課)へ電話で来庁予約します。申請当日は代表者と旅行業務取扱管理者が同席し、内容説明を行うことになります。
4. 提出・審査(約30〜40日)
書類受理後、担当官が内容を精査し、営業所実地調査が行われることもあります。不備があれば補正指示が届くので、指定期限までに修正書類を提出します。
5. 登録通知と手数料納付
登録が認められると通知書が交付されます。交付時に手数料9万円を現金またはクレジットカードで納付しなければなりません。
6. 営業保証金または協会加入(14日以内)
都に対して営業保証金を供託するか、日本旅行業協会あるいは全国旅行業協会に加入します。
保証金を供託する場合
登録通知日から14日以内に法務局で1,100万円を供託し、供託済届を東京都へ提出。
協会加入する場合
日本旅行業協会(JATA)または全国旅行業協会(ANTA)の保証社員となり、220万円を納付。協会発行の納付書写しを都庁へ提出。
7. 営業開始の最終チェック
- 登録票・約款・料金表を営業所に掲示
- 標識・広告類に登録番号を表示
- 旅行者用苦情窓口を明記
これらを整えたら、晴れて東京都認可の第二種旅行業者として営業をスタートできます。
保証金は資本金とは別枠で用意します。経営・管理ビザで必要な資本金500万円とは別に供託金あるいは協会加入費用が必要になるので、資金計画に必ず上乗せしておきましょう。
会社設立から営業開始までの最短スケジュール
| 週 | 手続き | 実務のヒント |
| 0 | 事業計画確定・定款作成 | 定款に「旅行業」を明記し、発起人全員の実印・印鑑証明を取得。 |
| 1 | 資本金払込み・登記申請 | 外国資本の場合は送金レート証明を添付すると審査が早い。 |
| 3 | 経営・管理ビザ(COE)申請 | 事業所契約書・資金証明を同封し、標準2か月で交付。 |
| 11 | 在留資格変更許可 → ビザ取得 | COE受領翌日に変更申請すればタイムラグを最小化。 |
| 12 | 旅行業登録申請 | 登録手数料と保証金を同時に準備。 |
| 18 | 登録完了・営業開始 | 登録票・約款・料金表を店頭掲示して正式オープン。 |
審査をスムーズに進めるための工夫
旅行業登録の審査をスムーズに進めるためには、以下のような工夫をすることも大切です。
自治体の事前相談を活用
多くの都道府県は事前相談を実施しています。自治体の相談窓口を利用することで、書類の不備を早期に是正できる点がメリットです。
旅行業協会が発行する入会予定証明書の活用
入会予定証明書は、まとまった保証金を旅行業協会経由で確保済みである証拠になるため、資金要件を実質的にプラス評価とすることができます。
外国語カスタマーサポート体制の用意
インバウンド需要を意識してカスタマーサポート体制の準備をしておけば、事業の実現性・安定性を補強できるため、ビザ審査で好印象になるといわれています。
外国人の旅行会社立ち上げについてよくある質問(FAQ)
外国人が日本で旅行会社を設立する際によくきかれる疑問点に回答していきます。
Q:資本金500万円を外貨で払込めますか?
可能ですが、払込時の為替レート証明を添付し、円換算で500万円を超えていることを証明する必要があります。
Q:スタートアップビザの猶予期間中に売上を上げても問題ない?
テスト販売は可。ただし本格営業開始は経営・管理ビザへ切替え後に行うのが無難です。
Q:第1種を狙う場合、保証金7,000万円を必ず用意?
協会加入で10%の700万円に圧縮できます。残りは協会の弁済業務保証によってカバーされます。
まとめ
外国人が日本で旅行会社を設立する際は、ビザ・資金・登録を同時に設計することが大切です。経営・管理ビザの取得はもちろん、スタートアップビザを上手に活用して準備を進めましょう。事業計画・資本構成・登録要件を作り込む際は、行政書士などの専門家による事前ダブルチェックを受けて、不許可リスクを最小化することも大切です。
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