日本では国籍にかかわらず株式会社を設立できます。しかし在留資格(ビザ)の取得と資本金の払込みという二つのハードルをクリアしなければ、登記だけ終えても経営ができない“開店休業”状態に陥ります。
日本では「スタートアップビザ」とよばれる外国人起業活動促進事業の促進もあり、起業したい外国人の背中を押しています。上手に準備して適切な在留許可(ビザ)取得を目指しましょう。
ここでは、外国人が日本で株式会社を設立できるのか、そのためにはどのような準備が必要か説明していきます。
外国人が使える主な在留資格3つ
在留資格 | 概要 | 活動制限 | 初回在留期間 | 取得の主要条件 |
経営・管理ビザ | 既存の王道。会社経営や管理職に従事 | 就労可(本業のみ) | 1~2年 | 独立した事業所+資本金500万円以上または常勤2名雇用 |
スタートアップビザ | 事業準備6か月~1年の“仮ビザ” | 起業準備のみ可 | 6か月(延長可) | 自治体の事業計画認定+資金計画の実現性 |
永住者・定住者等 | 資本金要件なし/就労制限なし | なし | 無期限 | 既に該当在留資格を保有 |
ビザ申請は「会社設立の後」に行います。登記完了時点で事務所と資本金要件を客観的に証明できる資料をそろえておくと、審査がスムーズです。
設立準備で必ず確認すべき5大ポイント
会社の設立準備を行う際、次のポイントに注意しましょう。
資本金500万円の原資
日本円建てで払い込むのが最も簡単。外貨→円の場合は送金レート証明書を添付し差額トラブルを防止。
日本国内の銀行口座
発起人が非居住者なら、協力者(取締役予定者など)の国内口座を利用するか、来日後に本人名義口座を開設して資本金を移す二段階方式が主流。
事業所の確保
バーチャルオフィス不可。賃貸借契約書+現地写真で“独立性”を示す。
会社実印・銀行印の作成
印影データを会社案内やウェブサイトにも統一使用し、ブランド信用度を底上げ。
外為法の届出(出資者が非居住者の場合)
設立30日以内に日本銀行へ報告が必要。漏れると罰則対象なので要注意。
資本金払込みでつまずきやすい2つのケース
ケース | よくある誤解 | 正しい対処 |
①海外支店口座を使用 | 「日本の銀行だから問題なし」 | 円建てで払込/外貨ならレート証明添付。通帳コピーに銀行名+支店名+日付+残高が写っているか確認。 |
②本人名義口座が未開設 | 「とりあえず友人名義で払えばOK」 | 受領口座名義人を取締役に就任させるか、銀行口座開設後に増資で本人資金を反映させる。 |
会社設立~ビザ取得までのスケジュール(最短モデル)
週 | 手続き | 解説 |
0 | 事業計画/定款ドラフト | 収支計画・組織体制・市場分析を盛り込み、ビザ審査でも流用できる形に |
1 | 実印作成・定款認証 | 公証役場でオンライン定款なら印紙4万円が不要 |
2 | 資本金払込み | 払込証明書をExcelで作成→銀行発行の取引明細を添付 |
3 | 登記申請 | 法務局窓口 or オンライン。完了まで約1週間 |
5 | 法人口座開設・官庁届出 | 税務署、都道府県税事務所、年金事務所へ |
6 | 経営・管理ビザ申請 | COE(在留資格認定証明書)取得後に在外公館で査証発給 |
スタートアップビザを利用する場合は、①自治体プレ審査→②在外公館で仮ビザ取得→③来日後に会社設立、という逆順になるため2~3か月前後の猶予期間を見込むと安心です。
必要書類と作成のコツ
会社設立・在留許可(ビザ申請)に伴う必要書類と作成のコツについて覚えておきましょう。
登記段階で提出する主書類
会社の設立登記に向けて準備が必要な主書類を確認します。
定款
日本語原本+英文対訳で作成することを推奨します。複数言語で備えておくと海外投資家との契約時に重宝するかもしれません。
資本金払込証明書
通帳コピーは表紙・入金ページ・残高ページの3点セットで用意しておきます。
取締役就任承諾書+印鑑証明またはサイン証明
海外サイン証明は日本領事館または母国の公証人発行が有効です。
ビザ申請時に追加する主書類
ビザ(在留許可)申請に向けて準備が必要な主書類を確認します。
事業計画書(A4・10ページ程度)
3年分の売上・利益予測、採用計画、マーケ戦略を具体的に数値化。
オフィス賃貸契約書・写真
受付・執務室・設備の3枚以上をカラーで提出すると説得力UP。
役員履歴書+職歴証明
管理経験3年以上を示せる証明書を添付すると審査加点。
外国人の会社設立に関するよくある質問(FAQ)
外国人が日本で会社設立するうえで生じやすい疑問に回答していきます。
Q1:資本金1円でも登記できると聞きましたが?
登記自体は可能です。ただし経営・管理ビザでは500万円要件を満たさないと在留資格が下りません。追加増資や常勤雇用で要件クリアを。
Q2:ビザ取得前に売上を上げても問題ありませんか?
登記直後のテストマーケティング程度なら可。ただし本格営業開始はビザ取得後が原則です。
Q3:取締役全員が海外在住でも設立できますか?
可能ですが、外為法の届出や郵送コストが増大します。日本在住者を1名入れると手続きが簡略化されます。
まとめ
会社設立とビザ審査は、並行して資料を整えると最短1か月で開業することも可能です。書類不備による再申請は時間もコストも二重にかかるため、プロによる事前チェックが賢明です。
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